「基礎的自治体の地域博物館のあり方に関する指標(案)」への意見募集について

 2014年1月26日(日)に、地方史研究協議会主催シンポジウム「基礎的自治体の博物館・資料館の使命と役割2―「地方史研究協議会版 地域博物館指標」を考えるー」を開催しました(詳細は会誌第369号参照)。その際、会場で配布しました「地方史研究協議会版 地域博物館指標(素案)」に関しまして、後日、会誌や当会ホームページを通しても、意見募集を行いました。シンポジウム参加者や会員の皆様よりお寄せいただきましたご意見をふまえ、修正を行い、改めて「基礎的自治体の地域博物館のあり方に関する指標(案)」を作成し、以下に掲載します。より良い「指標」にしていくために、みなさまのご意見をお寄せいただきたくお願い申し上げます。
なお、ご意見は、下記の地方史研究協議会事務局まで、ご郵送かFAX(ファックス)にて、2014年11月21日(金)までにお送りくださいますようお願い申し上げます。

地方史研究協議会(博物館・資料館問題検討委員会)


【ご意見送付先】
地方史研究協議会事務局
〒111-0032 東京都台東区浅草5-33-1-2階
FAX 03-6802-4129

 

基礎的自治体の地域博物館のあり方に関する指標(案)

 

趣旨

地方史研究協議会は、地方史研究・地域史研究の促進や歴史資料保存利用の環境整備に努める活動をおこなってきました。そうしたなかで、地域史研究を行う拠点として、「地域資料」の収集、保存や調査・研究、公開・活用をはかることを重要な使命・役割としている基礎的自治体の歴史・民俗系博物館(以下、「地域博物館」と称す)の動向に注目し、その問題やあり方についても検討を進めてきました。

地域博物館の「地域資料」とは、当該地域社会を特徴づける有形・無形の所産であり、現行の行政区域以外に所在する資料も含みます。例えば、それらの資料は、地域の記録や生活に関わる景観、生業、習俗、技術、政治、生態系・自然環境とその推移についての資料です。

地域博物館がそのような「地域資料」を核とした上記のような基本的な使命・役割を果たすことによって、当該地域の日常や生活、風土、文化、歴史を、現代に生きる地域住民、そして後世に伝えていくことができると考えます。

そのことは人文系科学及び自然系科学の発展に貢献するのみでなく、地域の学習(学校教育・社会教育)や観光などでも教材や資源として活用し、地域住民が、地域の歴史と文化に対して理解を深めるなかで、地域アイデンティティを持ち、地域社会を維持・発展させることにも寄与します。またそのことが当該「地域資料」の保存にもつながっていくものと考えます。

しかし、近年、各地域では過疎化や人口の空洞化の進行、災害による地域資料の喪失という現実があります。また、「地域資料」を核とした地域社会の発展に寄与するべき全国の地域博物館の中には、財政難や行政改革などの環境変化により、館の核となる活動である「地域資料」の収集・保存、調査・研究、公開といった継続性のある事業活動に十分な予算・人員、時間を充てがうことができないところも多くみられます。

こうした地域博物館をとりまく環境の変化を鑑み、「地域資料」を保存し、調査研究や展示、学習支援などの公開・活用を通して、地域住民とともに、未来に遺し、伝えていくために、より有益な博物館として運営・事業活動をしていく際の参考にしてもらうことを目的に、「基礎的自治体の地域博物館のあり方に関する指標」を作成し、提示いたします。
(博物館・資料館問題検討委員会)

1.施設と運営体制/学芸員
(1)地域資料の収集、保存や調査・研究、公開・活用を持続的に行っていくために、適正な規模の博物館施設が一定の場所に設置されている。
(2)基礎的自治体が設置した博物館の施設の維持・管理及び事業活動は、設置者により責任をもって継続的に行われている。
(3)地域資料の保存及びそれを核とした博物館活動を行うために不可欠な施設の修繕費や改修費が担保・計上され、定期的な点検・補修が実施されている。
(4)地域資料の収集、保存や調査・研究、公開・活用を継続的に行っていくために、必要な職員を配置するなど、管理・運営体制の基盤が整備されている。
(5)博物館の設立理念や基本方針に沿った事業計画が企画・立案され、これらの実施は設置者によって保障されている。
(6)当該地域の日常や生活、風土、文化、歴史(政治、社会、経済)などに対する地域住民の理解を深め、後世に伝え、重要な使命を担う地域史研究者を支援するため、歴史・考 古・民俗・美術といった各分野の技能や専門性を有する学芸員が適正に配置されている。
(7)当該地域の資料伝来状況などをふまえ、歴史分野に関しては、古代・中世・近世・近現代などの時代別に専門性をもった学芸員が複数、適正に配置されている。
(8)学芸員の専門性を活かした職務内容が保障されている。
(9)継続性のある博物館活動を行うために専任の学芸員が適正に配置されている。
(10)学芸員や館職員に対して、適正な配置後、継続的な技術と知識の向上に理解を示し、研修機会を提供するなど、専門的な人材育成が積極的に行われている。

2.資料の収集・整理、保存・管理
(1)博物館・資料館の設置目的にもとづいた資料収集の基本方針がある。
(2)当該地域を特徴づける地域資料を積極的に収集している。
(3)調査・研究にもとづき、当該地域における資料の所在情報を継続的に調査収集し、現所有者を把握している。
(4)当該地域に関わる資料所蔵者(現行行政区域外の資料所蔵者も含む)と日常的に連絡をとるとともに、所蔵者の理解を得て定期的にその資料の確認を行い、その保存について 所蔵者にアドバイスなどを積極的に行うなど、資料の保存、散逸防止に努めている。
(5)当該地域に関わる資料を所蔵する公文書館や図書館などと連携し、資料情報の収集、ネットワーク化を行っている。
(6)歴史学・史料学・考古学・民俗学・地理学・文学・美術等の学術的な水準に照らし、現行の行政区域を越えた周辺地域、またはより広域的な地域範囲で比較・検討を行ない、 地域資料の収集を行っている。
(7)利用者による閲覧などの利用頻度が高いものについては、資料保護の観点から、資料の複製化などの措置を講じている。
(8)温湿度が適切に管理され、防災機能が設置された、資料を保存するための収蔵庫がある。
(9)定期的な清掃やIPM(総合的有害生物管理)の手法にもとづくモニタリングなどを実施している。
(10)資料の整理・保存は史料学・文化財保存科学などの学術的・技術的成果を取り入れるなど、専門的な知見にもとづいて行われている。

3.調査・研究
(1)博物館の設置目的にもとづいた調査・研究を行っている。
(2)歴史学・史料学・考古学・民俗学・地理学・文学・美術等の学術的な水準に照らした学術的・実証的な方法や成果にもとづいた当該地域の調査・研究が保障され、継続的・計 画的に行っている。
(3)地域の生活、風土、政治、文化、歴史を考え、明らかにするために、景観、生業、生活組織、衣食住、文芸、娯楽などの生活文化など、地域の多様な事象に留意しながら地域 資料の調査・研究を行っている。
(4)地域史の調査・研究にあたりフィールドワーク(現地調査)を行っている。
(5)当該地域の調査研究の成果を掲載した研究紀要・資料集などを定期的に刊行している。
(6)学芸員・館職員の館外における調査・研究活動ならびに館務において必要な技術・知識の向上に資する学術団体の研究集会などへの参加を館務として認めている。
(7)当該地域の資料や歴史に関する調査・研究のため、他館とのネットワークを構築し、外部機関・研究者などとの連携をはかっている。
(8)地域史研究に興味・関心をもつ利用者の地域史研究活動を支援することを意図して調査・研究成果を当該館に蓄積している。
(9)調査・研究にあたり、現行の行政区域を越えた周辺地域、またはより広域的な地域範囲で比較・検討を行っている。
(10)総合的な地域史の調査・研究を行っている。

4.展示/公開・活用
(1)地域史像の把握に努めて行われた地域史研究の成果にもとづき、学術的・実証的な方法によって、地域資料を中心に扱った常設展示を行っている。
(2)当該地域の歴史に関して、地域の日常や生活、風土、文化の特質をふまえ、地域資料を中心とした特別展・企画展などを定期的に実施している。
(3)企画展示図録や展示記録を発行している。
(4)博物館活動における調査・研究成果を反映した常設展示資料の展示替えを定期的に行っている。
(5)収蔵品目録が完備しており、館外からの検索などのアクセスが可能となっている。
(6)館蔵資料に関する収蔵品目録などを定期的に刊行している。
(7)閲覧・公開基準があるとともに、常時、閲覧して相談できる体制にある。
(8)資料の公開にあたっては取扱いに関わる所定のルールが定められている。
(9)当該館が整理・把握している個人所蔵資料、民間所在資料などは、目録を作成し、所蔵者の理解・許可を得て、当該資料を閲覧できる体制を整備し、複製を作成するなどして、公開・活用を促進するよう努めている。
(10)博物館活動で得られた調査・研究成果、知見を当該地域住民はじめ広く社会へ還元している。

5.地域理解・学習、地域史研究の支援
(1)地域資料の保存と活用をはかるため、資料の理解を深める研修会・見学会・講座などの各種事業を定期的に行っている。
(2)地域にある史跡や建築物、民俗芸能など有形・無形の地域資料への理解を深めるために、現地での見学会を定期的に行っている。
(3)地域史研究の実証的・学術的な方法にもとづいた調査・研究成果の報告や地域資料に関する理解を深めるための市民講座・イベントなどを定期的に行っている。
(4)地域資料や地域史研究に興味・関心をもつ地域住民・利用者が主体的に地域史研究の方法にもとづいた研究活動を行うことができるように、定期的に研究会などを主催するな ど、学習支援を積極的に行い、資料保存・地域史研究の担い手となる人材育成をはかっている。
(5)地域史・文化を保存・継承する拠点として、地域住民の交流をはかり、地域資料の発見、収集保存、また伝統技術・行事などの継承に努めている。
(6)地域の小学校・中学校などと連携をはかり、子供たちが当該地域史への興味・関心を深めてもらうことを目的とした事業を企画し、参加を促進している。
(7)地域の学校と連携しながら地域学習のための利用を積極的に支援している。
(8)家庭・親子対象の地域史への興味・関心を深めてもらうことを目的とした事業を企画し、参加を促進している。
(9)地域のコミュニティ・各種諸団体対象の当該地域史への興味・関心を深めてもらうことを目的とした事業を企画し、参加を促進している。
(10)地域資料の所蔵者や所蔵機関、地域史研究の担い手となりえる人々などとの関係を構築し、地域史を学べる拠点として、利用者に情報を提供している。

※以下のリンクからPDFファイルがダウンロードできますのでご活用ください。
「基礎的自治体の地域博物館指標(案)」への意見募集について(PDFファイル)