本会では、2011年(平成23年)3月4日付けで、会長名をもって、麻生渡全国知事会会長、森民夫全国市長会会長、藤原忠彦全国町村会会長に宛て、「「公文書等の管理に関する法律」施行にともない、地方自治体において公文書・民間所在史料の保存・活用体制を構築することを求める要望書」を送付しました。
これは、本年4月に施行される「公文書等の管理に関する法律(公文書管理法)」の第34条において、地方自治体に対する公文書管理の努力義務が明記されていることに対して、今後の各自治体の公文書・民間所在史料の保存・活用の流れが後退することのないよう、各地方自治体に対して求めたものです。
当要望書は、3月4日の常任委員会での審議、決定を経て送付しました。以下その全文です。
2011(平成23)年3月4日
全国知事会 会長 麻生 渡 殿
全国市長会 会長 森 民夫 殿
全国町付会 会長 藤原忠彦 殿
地方史研究協議会
会長 松尾 美恵子
「公文書等の管理に関する法律」施行にともない、地方自治体において公文書・民間所在史料の保存・活用体制を構築することを求める要望書
私たち地方史研究協議会は、1950(昭和25)年の創立以来、地方史・地域史研究の推進を目的に活動している会員約1,500人を擁する全国学会です。
本会は、戦後、いち早く地域に残る古文書等の散逸について警鐘を鳴らすとともに、昭和の市町村合併時には、合併に伴う諸史料散逸を憂慮して当時の自治庁に対して要望書を提出いたしました。また、1987(昭和62)年に公布された「公文書館法」成立にあたって、地方史・地域史研究の立場から様々な発言や要望を行ってきました。
さて、2009(平成21)年7月に「公文書等の管理に関する法律」(以下、「公文書管理法」と略す)が公布され、本年4月に施行される運びとなりました。同法第34条では「地方公共同体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する文書の適正な管理に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない。」と明記されており、地方自治体においても、歴史的に重要な公文書等を保存し、これを将来に向けて役立てるための体制を整えることが望まれます。
また、「公文書管理法」施行にあたっては、次のような問題もあります。
一つは、平成の市町村合併後の旧市町村関係文書の扱いについてです。自治体によっては、選別を行わずに廃棄してしまう例や、決して良好とはいえない保存環境にある例などを聞き及んでいます。
もう一つは、近年の著しい社会の変容により、地域住民の生活文化や歴史を明らかにしうる古文書等の民間所在史料が散逸の危機にあることです。さらに、博物館・資料館等が休館や統廃合に追い込まれているため、散逸の危機が増幅されるに至っています。
私たち地方史研究協議会では、公文書及び民間所在史料が確実に将来にわたって遺され、多くの人に活用されることを切に望んでいます。
そこで、「公文書管理法」施行にあたり、公文書の管理について地方自治体が同法の趣旨にのっとり、その管理体制の徹底をはかるとともに、民間所在史料についても、その収集・保存・活用体制を構築するよう、下記のことを要望いたします。
記
1.「公文書管理法」第34条の趣旨にのっとり、各自治体においても公文書等の管理に努めるとともに公文書館等を設置すること。これまで先進的に公文書の保存・管理と公開を行ってきた自治体については、引き続きそれぞれの状況を活かした体制を敷くととともに、以前よりも公開が後退することのないようにすること。また、そのための専門職員を配置すること。
2.「公文書管理法」施行により、資料保存の在り方が公文書に偏重することなく、古文書等の民間所在史料の収集・保存・活用に努めること。また、公文書館・博物館・資料館・図書館相互の連携をはかり、互いの機能を低下させることなく、補完しあい、それらの事業に取り組むこと。
以上