「地方史研究協議会版 地域博物館指標」(素案)への意見募集について

2014年1月26日(日)に、地方史研究協議会主催シンポジウム「基礎的自治体の博物館・資料館の使命と役割2―「地方史研究協議会版 地域博物館指標」を考えるー」を開催しました(詳細は会誌第369号参照)。その際、会場で配布しました「地方史研究協議会版 地域博物館指標(素案)」を以下に掲載します。より良い「指標」にしていくために、みなさまのご意見をお寄せいただきたくお願い申し上げます。
なお、ご意見は、下記の地方史研究協議会事務局まで、ご郵送かFAX(ファックス)にて、2014年8月23日(土)までにお送りくださいますようお願い申し上げます。

地方史研究協議会事務局
〒111-0032 東京都台東区浅草5-33-1-2階
FAX 03-6802-4129

                            「地方史研究協議会版 地域博物館指標(素案)」

この指標は、基礎的自治体が設置した博物館・資料館を対象としています。既存の自治体の博物館・資料館にあって、当該館が現在どのような位置にあるのか、または新たに設置する際に、利用者である地域住民、地方史研究者などをはじめ、当該館の職員や設置者である自治体が、博物館・資料館のあり方を考え、より有益な館にしていくうえで指標として参考にしてもらうことを目的に作成・提示するものです。
基礎的自治体の博物館・資料館については、地域資料(モノ+文書+無形など)の収集保存や活用・公開及び地方史研究を行う拠点であり、そうした活動を基本に、展示、教育普及活動を通して、当該地域の日常や生活、風土、文化、歴史(政治、社会、経済)を、地域住民、そして後世に伝える使命と役割をもっていると考えています。このように基礎的自治体の博物館・資料館のあり方を考え次の指標(素案)を作成しています。
(博物館・資料館問題検討委員会)

1.事業関係
博物館の機能を、以下6項目ごとに分類し、指標として示した。

(1)資料の収集・整理
①資料収集の基本方針がある。
②当該地域を特徴づける地域資料(地域の記録や生活に関わる資料)を積極的に収集している。
③調査・研究に基づき、当該地域における資料の所在情報を常に調査収集し、現所有者を把握している。
④当該地域に関わる資料所蔵者と日常的に連絡をとり、その保存について所蔵者にアドバイスなどを積極的に行っている。
⑤公文書館や図書館などと連携し、資料情報の収集を行っている。

(2)資料の保存・管理
①温湿度が適切に管理され、防災機能が設置された、資料を保存するための収蔵庫がある。
②利用頻度が高かったり、損壊のおそれがある当該地域の古文書などの記録資料に関して、原資料を保存している。
③公開・活用をはかるため、資料の複製化などの措置を講じている。
④定期的な清掃やIPM(総合害虫管理)の手法にもとづくモニタリングなどを実施して
いる。
⑤資料の整理・保存は諸分野の専門的な知見に基づいて行われている。

(3)調査・研究
①地域史研究の実証的・学術的な方法や成果にもとづいた当該地域の調査・研究が保障され、継続的・計画的に行っている。
②当該地域の調査研究にもとづく報告書などを掲載した研究紀要・資料集などを定期的に刊行している。
③職員の館外における調査・研究活動ならびに研修を館務として認めている。
④当該地域の資料や歴史に関する調査・研究のため、他館とのネットワークを構築したり、外部機関・研究者などとの連携をはかっている。
⑤調査・研究成果を当該館に蓄積している。

(4)展示
①地域史研究の実証的・学術的な方法や成果にもとづいた展示をしている。
②当該地域の歴史に関する常設展示を行っている。
③当該地域の歴史に関する特別展・企画展などを定期的に実施している。
④企画展示図録の発行、または展示記録をとっている。
⑤定期的に常設展示資料の展示替えを行っている。

(5)公開・活用
①収蔵品目録が完備しており、館外から検索などのアクセスが可能となっている。
②館蔵資料に関する収蔵品目録などを定期的に刊行している。
③閲覧・公開基準がある。
④資料の公開にあたっては取扱いに関わる所定のルールが定められている。
⑤博物館活動で得られた調査・研究成果、知見を当該地域住民をはじめ広く社会へ還元している。

(6)教育普及
①地域史研究の実証的・学術的な方法にもとづいた最新の調査・研究成果の報告や地域資料に関する市民講座・イベントなどを定期的に行っている。
②当該地域史に関する学習支援を積極的に行っている。
③当該地域住民と共同で地域史の調査・研究活動を行い、資料保存・地域史研究の担い手となる人材育成をはかっている。
④地域の伝統的行事・技術の継承に努めている。
⑤子供たちが当該地域史への興味・関心を深めてもらうことを目的とした事業を行うなど、当該地域の学校との連携をはかっている。

2.運営関係
博物館の運営を支える基盤(どの程度の規模で、何人くらいの学芸員が配置されるのが望ましいか)に関する指標として、人口20万都市に「48基準」(註)を適用した場合の数値を基準として示した。

(1)建物面積
・施設面積が2000㎡以上ある。
(数値算出方法)
⇒「48基準」では、区市町村博物館の施設面積を2000㎡以上としている。
※ そこから生まれる計算:人口100人につき1㎡⇒2000㎡
※※ 面積割合が「48基準」と同等であることも重要

(2)必要な学芸員数
・学芸員を6人以上配置している。
(数値算出方法)
⇒「48基準」では、区市町村博物館の学芸員の配置数は6人となっている。
※ 自治体職員数基準の計算:1200人前後(20万都市の職員数)×0.5%⇒6人
※※ 非常勤職員は0.5人として扱う

註)「48基準」
・昭和48年11月20日文部省告示第164号「公立博物館の設置及び運営に関する基準」
・昭和48年11月20日文社社第141号「公立博物館の設置及び運営に関する基準の取り扱いについて(通達)」

※以下のリンクからPDFファイルがダウンロードできますのでご活用ください。
地方史研究協議会版 地域博物館指標(素案)(PDFファイル)