地域の文化財保護や博物館活動に携わる「学芸員」重要性ついての声明

地域の文化財保護や博物館活動に携わる「学芸員」の重要性についての声明

私たち地方史研究協議会は、地方史研究・地域史研究を促進する立場から、地域の歴史資料(地域資料)の保存・活用について運動を行い、さまざまな提言を行っています。例えば地域博物館については、2015年に「基礎的自治体の地域博物館のあり方に関する指標」を公表し、地域博物館の使命と役割について地域史研究を行う拠点であると位置づけ、調査・研究によって明らかにされる地域の豊かな歴史・文化を、展示・イベントなどさまざまな場面で活用することも重要であると表明いたしました。

地域資料の保存・活用は、単に歴史研究のためだけではなく、地域づくりを行うための地域資源として、地域に残された文化遺産を記録、保存し、永く後世に伝えていくことに他なりません。専門的見地から文化財の保護や博物館の活動に取り組んでいるのが、「学芸員」です。

去る4月16日、山本幸三地方創生大臣から、文化財の保護に関わる学芸員の仕事を否定するかのような一連の発言がありました。発言はいくつかの誤解や事実誤認に基づいたものであり、すぐ撤回・修正されましたが、私たちは非常に残念に思い、かつ現状でも不十分な点が多い地域資料の保存に影響が出るのではないかと大変危惧しております。

そこで私たちは、地域資料の保存とそれに関わる「学芸員」の存在意義につきまして、以下の通り意見表明します。

地域資料は、さまざまな社会環境の変化により失われつつある地域コミュニティにとって、その歴史的伝統を示すことのできる貴重な歴史・文化遺産であり、かつ地域づくりや教育、文化、観光等々多様な活用ができる地域資源でもあります。文化財保護や地域博物館の活動は、その喪失を防ぐためのものであり、地域に生きて生活していた人びと、さらには今生活している人びとの証を、地域資料という形で調査して記録し、保存することを第一の使命とするものです。そうした地域資料を地域の方々の協力を得ながら資源化できるのは、資料の調査と保存について熟知した「学芸員」に他なりません。学術、教育、文化だけではなく、地域創生の鍵となるアイデンティティの形成や地域づくりに寄与しているのが、文化財の保護や地域博物館の活動に携わる「学芸員」の仕事であるといえます。一人でも多くの方々に、こうした専門職としての「学芸員」について正しい理解を求めるとともに、さまざまな形で地域社会に貢献している「学芸員」の重要性を強く訴えます。

2017年5月15日

地方史研究協議会

会長 廣瀬 良弘

 

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