本会では、二〇一〇(平成二二)年一月二八日付けで、会長名をもって、橋下徹大阪府知事に宛て、「大阪府公文書館の機能充実を求める要望書」を送付いたしました。
これは、大阪府がすすめようとしている、大阪府公文書館の府政情報センターへの統合・移転計画に対し、その措置を再検討することを要望したものです。とくに本会では情報公開制度と公文書館機能の一体的な運用について、双方の機能的な相違などを検討することを行わずにこれを実施することになれば、従来の公文書館機能が大きく損なわれる結果を生じるのではないかとの危惧を抱いており、府に対して公文書館機能の充実を要望しております。
なお、この件につきましては、一月一八日に、大阪歴史科学協議会・大阪歴史学会の二団体の連名で「大阪府公文書館の統合・移転に関する要望書」が出され、また、一月二三日には、日本歴史学協会が「大阪府公文書館の機能充実に関する要望書」を提出しております。本会も一月二八日の常任委員会での審議を経たのちに、要望書を送付することとなりましたが、今後も当問題に関しては、関係諸学会との連携を図り対応していきたいと考えております。
以下は要望書の全文です。
2010(平成22)年1月28日
大阪府知事 橋下 徹 様
地方史研究協議会
会長 竹 内 誠
大阪府公文書館の機能充実を求める要望書
私ども地方史研究協議会は、1950(昭和25)年の創立以来、地方史・地域史研究の推進を目的に活動している会員約1500人を擁する全国学会です。
本会は、これまで史料や文化財の保存をはじめとして、地方史・地域史研究にとってより良い環境をつくるための運動を展開してきました。なかでも地域に残る古文書や公文書の保存とその活用に関しては、重要な運動のひとつと位置付けており、積極的な取り組みを進めております。
さて、このほど大阪府が公文書の一元的な管理や現用公文書と歴史的公文書の一体的な利用を目的として、大阪府公文書館を府政情報センターへ統合・移転する計画を立てていることを知りました。本会ではこの計画に対し、以下の点から強い危惧を抱いております。
まず、公文書館を府政情報センターへ統合する上では、現用公文書を対象とする情報公開制度と、公文書館が所蔵・管理する歴史的公文書の収集とその公開制度との間に、利用の制限などの点で大きな相違があることを踏まえる必要があります。それらを検討せずに、情報公開制度のもとでの統合をすすめれば、これまで有していた公文書館機能が事実上消滅してしまうのではないかとの危惧を抱かざるをえません。
またその前提として、同館が所蔵する文献資料の一部を府立図書館に移管する方針が示されておりますが、図書館の主導により、選定基準が明示されない形での移管が進めば、今後の閲覧・研究機能に支障をきたすのではないかと危惧いたします。場合によっては、現在公文書館が所蔵している古文書等の資料群についても、廃棄処分対象となるのではないかと懸念しております。
周知のとおり、歴史的公文書の保存及び利用については、「公文書館法」第三条で、国および地方公共団体の責務とされ、その措置として公文書館の設置が示されています。また、昨年七月に公布された「公文書等の管理に関する法律」の第三四条で、地方公共団体が保有する文書の適正な管理に関して必要な施策を策定し、それを実施することが地方公共団体の努力義務となっております。
これらの立法趣旨に鑑み、歴史的公文書等の適切な保存及び利用を図っていくためには、公文書館機能の一層の充実・発展が不可欠と考えます。大阪府においては、すでに大阪府公文書館がその役割を担ってきており、今後も歴史的公文書の保存・公開の拠点となるべき重要な施設と考えております。今回行われようとしている公文書館の府政情報センターへの統合計画は、これに逆行するものであり、地方分権を謳う橋下府政の根幹にも関わる問題であると考えます。
本会は、全国各地域に所在する歴史資料の保存とその活用を図るという観点から、大阪府公文書館がこれまでに果たしてきた社会的役割や、資料を保存・活用する意義などについて、府が主体的に再確認し、その上で統合・移転と資料移管の必要性や妥当性を再考すべきだと考えます。加えて、今後の公文書館の在り方については、全国的な学術団体などによる評価を考慮して、公文書館の専門員や運営懇談会など、内外の有識者の声を聞きながら適切な方向性を探ることを提案いたします。
以上の点をふまえて、このたび大阪府が進めようとしている公文書館の統合・移転計画の措置を再検討し、公文書館機能の充実を図ることを強く要望いたします。