「国立国会図書館デジタルコレクションの著作権処理の改善による知識情報基盤の拡充を求めます」

日本歴史学協会の要望書「国立国会図書館デジタルコレクションの著作権処理の改善による知識情報基盤の拡充を求めます」に本協議会も11月21日付けで連名署名をいたしました。以下の通りです。

 

要望書
国立国会図書館デジタルコレクションの著作権処理の改善による知識情報基盤の拡充を求めます

文部科学大臣 永岡 桂子 殿

文化庁長官 都倉 俊一 殿

国立国会図書館長 吉永 元信 殿

国立研究開発法人科学技術振興機構理事長 橋本 和仁 殿

大学共同利用機関法人
情報・システム研究機構
国立情報学研究所所長 喜連川 優 殿

日本歴史学協会ほか歴史学に関わる 28 学会・研究会は、2020 年来の新型コロナウイルス感染症の拡大によって各地の図書館サービスが大幅に制限された状況を憂慮し、同年 5 月23 日に公開要望書「国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲拡大による知識情報
基盤の充実を求めます」(http://www.nichirekikyo.com/statement/statement20200523.html)を発表しました。この要望書は、新型コロナウイルス感染症への緊急措置という側面だけではなく、図書館所蔵資料へのアクセスを円滑化することで、学生・大学院生、そしてまた不安定な立場にある研究者もふくめたすべての研究・教育関係者が安定的に研究・教育活動を推進するための知識情報基盤を構築する一助となることを目指したものでした。
2020 年 9 月以降、日本歴史学協会は、国立国会図書館と協力しながら、国立国会図書館デジタルコレクションによる歴史学関係団体の学会誌のオープンアクセス化に向けた取り組みを進めてまいりました。また、国立国会図書館においても、2022 年 4 月以降、著作権処理の方針を改め、1.索引等で著作物に当たらないものについては著作権を考慮する必要はないこと、2.公正に引用された箇所については当該箇所の著作権保護期間が満了している必要はないことを前提に、デジタル化資料のインターネット公開を判断する運用を試行的に進めています。さらに、5 月 19 日以降、同館は、絶版などで入手困難な資料について、著作権法第 31 条第 4 項の規定に基づき、同館本登録利用者向けに個人向けデジタル化資料を送信するサービスを開始しています。
わたしたちは国立国会図書館による上記の取り組みを歓迎するとともに、学術的な知識情報基盤の拡充の観点から、以下の点についてさらなる改善を願うものです。

1.2022 年 4 月以降に開始された上記の試行的運用以前にデジタル化された資料(現在、国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開されている 57 万点の資料を含む)についても、同様の著作権上の処理をすみやかに行うこと。

2.1 冊に複数の著者の論文が収録されている論文集・学術雑誌は、章・論文単位でインターネット公開ができるようにすること。

3.個人向けデジタル化資料送信サービスについて、海外における日本研究の発展あるいは日本の学術成果の共有化のために、海外向けの同サービスの検討および実施を早期に実現すること。

上記の 2 については、学術論文においても人権に配慮した成果発表が求められる現在、学術論文集・学術雑誌に掲載された論文のインターネット公開に際して、今後、章・論文ごとに対応できるようにすることが必要になると考えています。国立国会図書館デジタルコレクションのサービスによるその実現には、さまざまな検討課題が残されています。著作権者側である歴史学関係の学会・協会も、研究成果のオープンアクセス化に向けて、本格的に取り組んでまいります。

これらの要望は、2020 年 5 月 23 日に発表した公開要望書で指摘したとおり、学生・大学院生、また不安定な立場にある研究者を含むすべての研究者が研究活動を継続できるような環境を整備するものであり、その実現を心より念願するものです。

2022 年 11 月 21 日

日本歴史学協会
高大連携歴史教育研究会
交通史学会
駒沢史学会
史学研究会
上智大学史学会
駿台史学会
専修大学歴史学会
地方史研究協議会
朝鮮史研究会
東京歴史科学研究会
東北史学会
奈良歴史研究会
日本史研究会
日本風俗史学会
東アジア近代史学会
別府大学史学研究会
法政史学会
歴史学研究会
歴史学会