岐阜県歴史資料館の機能縮小計画の撤回を求める要望書

本会では、2009年2月2日付で、会長名をもって岐阜県知事に対して「岐阜県歴史資料館の機能縮小計画の撤回を求める要望書」を送付した。以下はその全文である。

 

2009(平成21)年2月2日

岐阜県知事 古田  肇 様

地方史研究協議会

会長 竹 内  誠

 

岐阜県歴史資料館の機能縮小計画の撤回を求める要望書

 

私ども地方史研究協議会は、1950 (昭和25)年の創立以来、地方史・地域史研究の推進を目的に活動している会員約1600人を擁する全国学会です。

本会は、これまで史料や文化財の保存をはじめとして、地方史・地域史研究にとってより良い環境をつくるための運動を展開してきました。なかでも地域に残る古文書や公文書の保存とその活用に関しては、重要な運動のひとつと位置付けており、積極的な取り組みを進めております。

さて、このほど貴県の歴史資料館が、財政事情を背景とする行政全体の効率化に伴い、その運営を大幅に見直し、館の機能を縮小する計画を立てていることを知りました。本会では、その計画に対して以下の点から強い危惧を抱いております。

岐阜県歴史資料館は、開館以来30年の歴史を持ち、県民からの寄贈・寄託を含めた44万点を超える歴史的価値の高い資料を収蔵し、また、明治4年の廃藩置県以来の行政資料を保存する県唯一の「公文書館」的役割を担う資料館であり、これまでも県民をはじめ県内外の研究機関や研究者に利用されてきた重要な施設であると認識しています。

なお、同館は、戦国時代の織田信長関係文書などが寄託されている館としても広く知られております。今回の館の機能縮小計画によって、そのレファレンスや閲覧・研究などの利用が停滞することになれば、県や資料館を信頼し、利用されることを前提に貴重な資料を寄託された、県内の多くの所蔵者への背信行為につながりかねません。場合によっては、それらの資料が返還された後に、県外へと散逸することも想像されます。

また、同館の機能のうち、公文書の保存については、国が公文書管理法の制定に向けて整備を進めるなど、近い将来、全国各地で公文書の管理・活用を強化し、情報公開を目指していくことが予想されます。岐阜県歴史資料館は、公文書館法に基づいて運営されており、今後の公文書の管理・活用に際して県の拠点となるべき施設と考えます。今回のような館の機能縮小計画を推し進めることは、時代への逆行であり、公文書館法の法的責務を果たすためには、むしろ一層の充実を図っていく必要があるものと考えます。

本会は、全国各地域に所在する歴史資料の保存とその活用を図るという観点から、次のことを要望いたします。

①財政問題への対応による短期的な政治判断を行わず、同館がこれまでに県内外に果たしてきた社会的役割や、資料を保存・活用する意義などについて、県や県民が主体的に再確認するための期間を設けること。
②今後の館の在り方については、全国的な学術団体などによる評価を考慮し、また県内外の有職者の声を 聞きながら適切な方向性を採ること。
③後世に向けて今後も所蔵資料を整理し、継続的にその利用を可能とするための専門的知識や技能をもった一定数の職員を配したレファレンスを行うこと。

以上の点をふまえて、このたび貴県が進めようとしている歴史資料館の縮小計画を撤回し、その機能の維持を図ることを強く要望いたします。県として責任ある対応をしていただくことを切に希望しております。