「若手研究者問題」シンポジウム2017 歴史学の担い手をいかに育て支えるか ―日本歴史学協会「若手研究者問題」アンケート調査中間報告から―

日時:2017年3月4日(土)13時~
会場:駒澤大学駒沢キャンパス1号館204教場
※正門から直進、本部棟を通り抜けると1号館2階に着きます。

会場案内図

map_komazawa

プログラム
開会の辞   小沢弘明(若手研究者問題検討委員会委員長・日本学術会議連携会員)
趣旨説明   瀬畑 源(若手研究者問題検討委員会委員)
1)報告
1 日本歴史学協会ウェブ・アンケート中間報告
日歴協若手研究者問題検討委員会より     浅田進史(駒澤大学)
2 学部・大学院教育の現在―国立大学の事例から 山田 賢(千葉大学)
3 若手研究者問題は若手研究者問題か?―「大学改革」の30年と失われた未来、そして奪還への遠い道のり  橋本伸也(関西学院大学)
2)コメント
1 日本学術会議から   高埜利彦(学習院大学・日本学術会議会員)
2 西洋史若手研究者問題検討WGから  松本 涼(福井県立大学)
3)討論
閉会の辞   木村茂光(日本歴史学協会会長・日本学術会議連携会員)

主催:日本歴史学協会・歴史学研究会・東京歴史科学研究会・歴史教育者協議会・歴史科学協議会・九州西洋史学会・日本史研究会・西洋史研究会・同時代史学会・東北史学会・東北大学国史談話会

協力:総合女性史学会・内陸アジア史学会・広島史学研究会・信濃史学会・ジェンダー史学会・西洋近現代史研究会・現代史研究会・地方史研究協議会

[趣旨文]
歴史学は、人間とその社会が積み重ねてきた過去の痕跡を、発掘・保存・記録・検証・考察し、過去との対話を通じて現在の社会のあり方を問うものであろう。日本の大学・大学院は、学科・専攻・科目・演習・講義などの制度的枠組みのなかで、歴史学が積み上げてきた学問的蓄積と方法論を学ぶ場を提供し、歴史的判断力をもつ社会人を送り出してきた。そのなかには、研究・教育関係者、文書館・図書館・博物館・美術館などの専門職、出版関係者、学会事務スタッフといった歴史学界を支える担い手が含まれている。しかし、そのような歴史学の担い手を育て支える環境は、現在、どのような課題を抱えているのだろうか。
1990年代初頭に始まった大学院の拡充政策から四半世紀を経て、文部科学省が区分する「史学」の大学院生数は大きく減少した。修士課程の場合、1992年度の1121人から2015年度の762人へと、博士課程の場合、1992年度の721人から2015年度の444人へと、修士課程では3割強、博士課程で4割弱も減少した。同じ期間に、「文学」は修士課程・博士課程ともに3割弱の減少、「哲学」は修士課程で7割の増加と博士課程で2割弱の減少をみているが、「史学」の減少幅が人文科学系のなかでもっとも大きい。その一方で、人文科学系全体の大学院生の数は、同じ期間に修士・博士課程ともに6割以上も増加した。これは、「史学」・「文学」・「哲学」以外の「その他」として区分される院生が大幅に増加したためである。
したがって、この文部科学省が区分する「史学」の院生の減少は、単に歴史学を志望する学生数が減少したというよりも、国立大学法人化をはじめとした、この十数年に及ぶ日本の大学全体に対する制度改編を背景としたものであろう。同時に、文部科学省が区分する「史学」の院生の減少と「その他」の増大は、歴史学の担い手を育成し、またその担い手を支えるための制度的な基盤が大きく変容しつつあることを反映しているのではないだろうか。
2000年代に入って、非正規雇用の増大を背景とした格差問題に社会的関心が集まるとともに、「若手研究者問題」も学問の世界を越えて社会的な認知を得るようになった。他の学問分野ではこの問題について調査・分析と提言が公表されており、歴史学のなかでも西洋史若手研究者問題検討ワーキンググループによるアンケート調査を通じた分析と提言が現れている。1990年代以降の大学院拡充政策の結果として、人文社会科学全般で大学院生が大幅に増加してきたにもかかわらず、現在、歴史学の学会・研究会全般で、会員数の減少による活動継続への不安が語られている。歴史学の担い手を育て支える制度はどのように変化し、またどのような課題を抱えているのだろうか。そして、歴史学を専攻する「若手研究者」はどのような問題に直面しているのだろうか。
歴史関連諸学会間の相互連絡・交流の促進を目的とした日本歴史学協会は、若手研究者問題検討委員会を設置し、2015年9月から2016年3月まで「『若手研究者問題』解決に向けた歴史学関係者の研究・生活・ジェンダーに関するウェブ・アンケート調査」を実施した。2017年2月下旬までに同調査の中間報告書がウェブ上に公開される予定である。本シンポジウムは、この中間報告書を題材に、歴史学における「若手研究者問題」、すなわち歴史学の担い手をいかに育て支えるかについて、討論する場を提供するものである。
本シンポジウムでは、まず日本歴史学協会若手研究者問題検討委員会より同委員会が実施したウェブ・アンケートの中間報告書から浮かび上がる問題を、とくに大学院生・ポスドク・非常勤講師などを中心に、「若手研究者問題」に直面する当事者に焦点を合わせて整理する。そのうえで、歴史学の大学院教育が抱える現状・問題について、国立大学の事例として千葉大学の山田賢氏より報告いただく。また、教育史・教育社会史の立場から大学問題について発言されてきた関西学院大学の橋本伸也氏より、この「若手研究者」問題について発言いただく。これらの報告を踏まえて、日本学術会議から高埜利彦氏より、西洋史若手研究者問題検討ワーキンググループから松本涼氏よりコメントいただき、最後にフロアを交えた全体討論を行う予定である。
次世代の歴史研究者の育成に携わっている大学教員をはじめ、現に「若手研究者問題」の渦中にある非常勤講師や大学院生、その他歴史学に携わる様々な立場の方々の積極的な参加と討論をお願いしたい。
加能地域史研究会発足40周年を記念して、他地域の研究団体と、共通の研究テーマを掲げ、それぞれの地域の特色を反映させた研究報告・討論を行うことにより、地域史研究を単なる「一地域」の事例報告にとどめることなく、日本史全体のなかに一般化してゆく方策を探るとともに、相互に交流と親睦を図り、地域史研究の進展と活性化に寄与する。

シンポジウムチラシ(PDFファイル)