■地方史研究協議会主催シンポジウム
ご案内
■日 時:11月1日(日) 13時~17時(受付開始12:30)
■会 場:國學院大学学術メディアセンター1階 常磐松ホール
■資料代:300円
■プログラム
趣旨説明(10分)
報告(各40分)
■報告者及び論題
水嶋英治(常磐大学教授)
「博物館をめぐる今後の課題」
現在の博物館をめぐる大きな流れを踏まえた上で、基礎的自治体立博
物館の可能性やめざすべき方向性について。
桑原功一(渋沢史料館学芸員)
「地方史研究の立場から考える博物館・資料館の『使命と役割』」
足立区、呉市での経験をもとに、地方史研究協議会が考える基礎的自治
体立博物館の「使命と役割」について。
藤野敦(東京学芸大学附属高等学校教諭)
「教育現場から見た博物館・資料館の可能性」
教育現場の立場から博物館との連携などをどのようにしていくか。
また博物館に求めることを忌憚なく話してもらう。学習指導要領改訂と
の絡みについて。
休憩(15分)
討論(90分)
開催にあたって(企画趣旨)
近年、指定管理者問題や博物館法改正の動きを契機として、博物館のあり方(定義や存在価値)をめぐる議論が活発に行われた一方で、行政改革や財政難といったことを理由に、博物館の運営や活動そのものに対する見直しを迫る動きも見られるようになりました。
二〇〇八年に行われた法改正をめぐっては、文部科学省が設置した「これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議」の最終報告(「新しい時代の博物館制度の在り方について」)において、形骸化した博物館登録制度の改革や、博物館機能の充実・活性化をめざそうとする関係者の意図や方向性が示されておりました。
しかしながら、その核とされていた制度改革は盛り込まれず、予想よりも一部改正にとどまりました。その結果に対し、関係者から落胆の声が聞かれたのと同時に、大きな変革への気運が社会から起こらなかったこと、すなわち社会に対し、博物館の取り巻く環境の問題点を説明しきれていなかった博物館側の努力不足といったことも課題として残りました。
とはいえ、今回の改正では努力規定ながら(1)学芸員の研修の充実、(2)博物館の自己評価の推進が盛り込まれました。加えて博物館法施行規則改正という形で、学芸員養成課程の見直しも行われることになりました。 地方史研究協議会では、これまで博物館・資料館を地方史研究や地域資料の保存や活用を行う一つの拠点ととらえ、その活動に大きな関心を寄せてきました。また指定管理者制度の導入をきっかけに、博物館・資料館を取り巻く環境や学芸員のあり方について考えるシンポジウムを開催し、地域社会における博物館・資料館の意義などについて議論を重ねてまいりました。
今回は地域博物館、その中でもとくに運営や人材(人手不足、後継者問題)などの面で苦しい状況にある基礎的自治体(区市町村)の博物館・資料館の使命と役割について項目の柱とした各機関の評価・査定が行われています。このことは、博物館・資料館も例外ではなく、行政のスリム化や厳しい財政状況を理由の主として、指定管理者制度を入したり、活動の見直しをしたりといった動きがみられます。そして、この観点でみれば、博物館・資料館に対する行政や社会からの評価も厳しいものと言わざるをえません。これに対して、今回の法改正では、博物館による「自己評価の推進」が盛り込まれましたが、このタイミングをとらえ、地方史研究という観点から、博物館・資料館が果たすべき「使命と役割」を議論し、博物館・資料館が地域社会や利用者にとっても、さらに有益なものとなるような評価基準を作成したいと考え、本シンポジウムを企画しました。.
地方史研究協議会がこれまで開催してきたシンポジウムでは、博物館・資料館における事業の継続性の意義や専門性をもった学芸員の役割の重要性、そして、次世代の博物館・資料館活動を担う人材育成の必要性を確認し、このことをさまざまな媒体を通じて訴えてまいりました。それは、地域にある小さな博物館・資料館が、資料保存や調査研究、資料の公開・活用といった地道な活動を通じて、その地域独自の歴史や文化を守り、伝えてきたという確信があるからです。
「新しい博物館像」「博物館の可能性」というと、どうしても海外の動向や大型展への集客などに注目が集まりがちですが、地域の資料を保存し、また知の継承を地道に行ってきた基礎的自治体の博物館・資料館の活動や現場に今一度光をあて、評価基準作成の基本となる「使命と役割」のあり方について、みなさんとともに考えていきたいと思います。
博物館・資料館問題検討委員会